eco読み物

種の大事さを知る旅。南アフリカラスラーズバレーにて。その4

前回からの「粘土団子」の話の続きです。

たくさんの種類の野菜、果物等の種を集めて粘土団子にしてばらまくと、その土地に最もあったものが芽を出し、元気よく伸びて来ます。人が農作物を選ぶのではなく、自然が選びます。耕さず、水もあげません。

粘土団子は直径2cm程の球形の粘土で2、3個の野菜、果物の種をくるんだもので、蟻や鳥などから種を食べられないようにするほか、種にカビが生えにくくなります。粘土は土の中で保水力が最も高いので乾燥にも強いといわれています。

団子は丸いので壊れにくいほか、砂漠に粘土団子が撒かれると、朝晩の温度差でカチカチに固まった団子の表面が結露します。すると、その結露した水分が粘土団子と地面の接点に集まります。種が水を求め、重力方向に向かって根を伸ばすとき、団子と地面の接点に集まった水に向かって行きます。

そして驚くことに一度根を下ろし始めた種は、次の水源に向かって10cmでも20cmでも根を伸ばし続けるのです。前回紹介させていただいた本間さんから種が長く根を伸ばした写真も見せてもらいました。

僕は種の生命力に驚きました。

また、本間さんが講演の中で「例えばスイカの種を買うと、一袋に10粒ほど入って200円します。でも、熟したスイカ一個には500粒以上の種が入っていて、袋で買うとして計算すれば1万円分になります!」とおっしゃっていました。そんな話を聞くと、台所から出る種を捨ててしまうのはとても勿体無いことだと感じます。

粘土団子の種は芽を出す前に根を地中深くまで伸ばし、地下の水脈まで届いてから発芽します。だから発芽が普通の種まきよりも遅いそうです。

そうやって根をしっかりと伸ばしているから、苗木を作ってよその地に植えつけるよりもずっと丈夫だそうです。だから水をあげないで放っておいてもちゃんと育つので砂漠緑化に効果を発揮する訳です。植樹での砂漠緑化には莫大な費用がかかりますが、粘土団子は種と粘土の輸送費と団子を作る労力のみとなります。

10キロ四方の砂漠を緑化するには、12トンの種を春、秋2回、数年に渡り撒き続ける必要があるそうです。そして本間さんは長年、台所から出る種を捨てないで集めましょうと呼び掛けて来ました。そうです。台所の種が砂漠の緑化に役に立つのです。これは今日からでも簡単に出来ることですよね。

ただ、残念なことに近年の「国際植物防疫法」の改正で日本国内から海外へ種を送るのが大変難しい現状があり、本間さん達は種集めを続けることが難しくなりました。

その代わりに、今は「種を集める人」から「種を撒く人」となり、不耕起、無農薬、種の直播で野菜、米づくりを実践していらっしゃいます。

僕達家族も本間さん一家を見習い、今年は台所から出る種をしっかり集めて、近くの畑で直播による野菜作りにチャレンジしてみます。

執筆者紹介
中渓宏一(Seedman)

【プロフィール】
1971年シアトル生まれ。大手商社勤務などを経て2000年9月、サラリーマンを辞めて世界放浪の旅に。2003年、南アフリカで地球を歩いて木を植える男、アースウォーカーに出逢い、その後1年間ジンバブエ、ザンビアを共に歩き、木を植えた。2004年よりは日本中を歩いて木を植えている。

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札幌でのワークショップで作った粘土団子。直径は2cm程度で、中に野菜、果物の種2、3個が入っています。

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