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水について−その2「自分の土地に水が湧いている、北海道『太四郎の森』」

「太四郎」は泉さんの曾御祖父さんの名前だ。

数年前、自分の祖先がどこから移住してきたのかが気になり、戸籍を辿って石川県の村の名前までは付きとめた。石川県の電話帳を取り寄せて、その村の「泉」さんを調べると40件程或る。その中から直感で選んだ「泉」さんに電話を掛けると、ズバリその方が泉さんの本家であったそうだ。太四郎さんが石川から百名程の移住者を乗せた船で北海道に上陸した明治30年3月28日から丁度百年後、泉さんは太四郎さんを想い、同じ港に立っていた。誰か他にも同じ様に先祖を偲んで来ているのでは?という期待があったが、他には誰も居なかったそうだ。

太四郎さんが移住した頃、十勝平野は鬱蒼とした森だった。
国の政策で、当時は5町歩の十勝の森を開拓するとその土地が貰えたそうだ。太四郎さんも5町歩(約5ヘクタール)の森を開拓した。

泉さんは15年前に5ヘクタールの森を購入した。
10年に及ぶ綿密な下調べの末に購入したその土地は、東西に長く、南側に傾斜している。ということは全ての土地に良く陽があたる。そしてその土地の丁度真中あたりを、また東西に小川が流れる。その小川の源泉も土地の中にあり、その美味しい水は地元で評判。近所の御蕎麦屋さんがわざわざそば打ちの為に水を汲みに来る程で、保健所お墨付きの名水だ。泉さんはこの5ヘクタールの森を大事に育てている。

水は命。地球上の水全体の僅か0.8%の水を分け合う66億の人類。自分の土地から美味しい水が湧いているというのは今の時代、一番の贅沢、そして一番大事なことかも知れない。その土地に泉さんは「太四郎の家」を建てた。四件分の古民家の使える木材を組み合わせた立派な日本家屋。夕日が薄っすらと差込み、囲炉裏の煙が立ち込める中でゆっくりとした口調で太四郎さんのことを語る泉さんの姿を見ていると、江戸時代にタイムトリップした気分になった。

執筆者紹介
中渓宏一(Seedman)

【プロフィール】
1971年シアトル生まれ。大手商社勤務などを経て2000年9月、サラリーマンを辞めて世界放浪の旅に。2003年、南アフリカで地球を歩いて木を植える男、アースウォーカーに出逢い、その後1年間ジンバブエ、ザンビアを共に歩き、木を植えた。2004年よりは日本中を歩いて木を植えている。

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太四郎の家で語る泉さん

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